Speakを作った理由とこれからのこと

 スピークは、がん患者さん本人はもちろん、その周りにいる人たちが繋がれるコミュニティを目指しています。ここでは、なぜこれを作ったのか、理由と目的を書いています。



最初のきっかけは、5年くらい前。

周りにはこんなにたくさんいろんな会社があるのに、なんでみんな患者さんの周りのサービスを作ってくれないんだろう。という素朴な疑問を1部上場企業のマネージャー職さんに問いかけてみました。


「それは、どこにどのくらいいて、どんなものが本当に欲しいのかわからないし。市場が全く違うんだよね。何が欲しいかわかれば作ることはできるんだけど。あと、販売できる数が少ないから、チャレンジしにくいんだよね。」


というようなお話でした。その方もかなりうーーんとひねって考えてくれたのですが、やはり今の大きな会社の事業体だと難しい。何が難しいかって、そこに試行錯誤して突っ込んでチャレンジする人がいない。そして、その先にゴール感が見えない。


なるほどですよ。じゃあ、それは、チャレンジする人がいて、ゴール感が見えたらいいのねと思って始めたのが、「根拠ある医療的に正しい情報ソースをつけた情報を届けること」「公衆衛生から患者さんの生活まで、総合的に改善される提案をすること」「そのためにつながりを作り出すこと」この3つです。



9割がスマホを持って、病気について調べるのは検索サイト

現在日本国内のスマホ所有率は95%です。ほとんどの人がスマホを持ち、検索で気軽に情報にアクセスできるようになりました。病気になった時にどこで情報収集するのかを調べた調査では、70%の人がネット検索を一番に挙げました。医療者への質問は65%でした。


参考URL:インターネットにおけるがん医療情報の 現状と,改善への取り組み

https://www.jstage.jst.go.jp/article/johokanri/53/1/53_1_12/_pdf



そんな中で、その情報はどのくらい正しいのでしょうか。


ここに、日本とアメリカの肺がんに関するオンラインの情報が、どのくらいの確率で正しいのかについて調べた研究があります。


参考URL:Differences in the Quality of Information on the Internet about Lu ng Cancer between the United States and Japan

https://www.jto.org/article/S1556-0864(15)32421-7/fulltext#cesec50



こちらの表は、オンラインで肺がんについて検索した時に出てきたサイトを評価したもの。グラフの一番下のグレーの部分が、根拠あるものに紐付いているサイト。黒い部分がそうでないもの。一番上の点々は、評価困難。ここから見えるのは、日本語検索で正しい根拠ありは50%未満ということが読み取れます。


これは、検索サイトの質ではなく、情報の偏りによるものだと考えられます。なぜなら、同じ論文の中の調査によると、アメリカの情報サイトは責任のあるNPOや研究機関が出しているものが上位で、それが評価されているから。日本は、そこがとても弱いようです。そして、インターネット上ではだれもが研究機関とおなじような「見た目」に整えた情報が出せるので、見分けがつきません。


Yahoo-JとGoogle-Jが日本のヤフーとグーグル。Google-Uがアメリカのグーグル。

引用元https://www.jto.org/article/S1556-0864(15)32421-7/fulltext#cesec50



医療の周り、日常生活のことは、さらに見えにくい。

私は普段、がんなどの患者さんの話を聞いて、治療やその副作用で出てくる日常生活の困りごとを解決する、という仕事をしています。やり場のない思いの話から、具体的に明日からどうやって外出しよう、遺影は、というところまで、色んな話を聞いてきました。こういう情報をPRO(patient reported outcome)とかRWD(real world date)などど言います。それらをずーっと聞いています。ニーズには個人差が大きく、結論は一つでもなく、ご自身が決めて行動していくことを支援するようにしています。


これらの相談内容は、一般の人には非常に説明がしにくく、見えにくいようです。私が受けた相談内容についても、数と質で単純に分類することが難しいです。難しさには、ニーズのタイミングと、気持ちの問題と物やサービスで解決する問題が混じり合っていることが一因に挙げられます。


特に、患者さんのお話をどのタイミングで聞くのかにより、ニーズの内容がかなり変わってきます。同じ人でも、がんの治療を始めるころの落ち着かない不安な時期と、だいぶ治療が落ち着いてきたころ、本格復帰して自信が戻ってきたころ、これらのタイミングでニーズがかなり変わります。



じゃあ、見えるようにしよう、患者さんに繋がれるようにしよう、というのがスピーク

見えないながらも、タイミングごとに出せる解決方法は、私たちにはある程度見えています。これを色んな人に見えるようにしたら、ものやサービスが開発されるのではないか、と私は考えています。


治療が始まる頃、病院での治療の最中は、病院に行くことも多く医療者も関わりやすい。この時期の情報は、医療者が持っています。そして、だんだんと治療が落ち着いて、生活リズムも安定してきた頃には病院に通うことが少なくなってきています。病院に通うことが少なくなって日常生活のリズムが整ってくるということは、その人の日常生活に戻りつつある時期。ここは患者会などが持っています。ピアもここの情報を持っています。

この2つの場所と、ネット上にもたくさん情報はあるけれど、それを社会の中で安定した事業として解決していこう、という視点で出している人が圧倒的に少ない。だから、最初に企業の人が言ったような「見えない」という回答が帰ってくる。


わかりやすく見えるようにしたら、どうなるの?


見えるようにすると、ある人達には「うちのサービスをちょっと変化させたら、この人達に使ってもらえるかも」「これ、新しく作れるかも」というビジネスの種が見えてきます。最初に「見えない」と言われた、ニーズが見えるからです。見えて、作ったら、そこには繋がりがあります。繋がりがあれば、解決方法は届けられます。患者さんの周りを豊かにするサービスができてきて、特別なものでもなくなり、買って使えるサービスの種類や金額が豊富になる。自由競争でいいものが患者さんの手に届きやすくなります。そのような場所をプラットフォームと言うので、スピークはがん患者さんがゆるくつながるプラットフォーム、と言えます。



そのために大事なことは、エコシステム。自然につながり、育っていくこと。

スピークを育てる上で大事なことは、無理に商業的に情報や人の流れを作るのではなく、情報が自然にはいってくることです。そして、入ってきた情報を活用していい感じのサービスが作り出されること、それによりここに来てよかったと良い体験をしてもらうことです。役に立つこと、とも言えます。


役に立つと患者さんの周りの医療者や支援者の多くの人が認知して、スピークに期待をして、ここを使ってくれるようになれば、自然に人の流れができてきます。私たちが「いいこと」をし続けることで、がん患者さんたちの生活がハッピーになれば、そのサイクルは続いていきます。続くサイクルが自然に育っていくエコシステムが出来上がります。



体験者の役割、医療者の役割、私たち社会の事業者の役割、みんなの役割をそこにセットしていく。

がんだけではありません。一定期間にギュッと治療して終了する急性疾患と違い、長い期間のお付き合いで生き方を考え直すような病気は他にもあります。これを慢性疾患といいますが、この慢性疾患とともに社会生活を続けていくには、周りからのサポートが必要です。


このサポートをする人たちは、役割がある程度はっきりしています。専門性とか体験が異なるからです。例えば、体験者はその体験から深く共感できますし、具体的な情報を持っています。また、元気に自分を助けてくれる先輩の姿は、これから治療を進めていく人の心の支えになります。存在そのものが価値、という素晴らしい役割です。医療者は、その専門性から、医療と体のこと担当。私たち社会で仕事を作っている事業者たちは、皆さんが困っていることへ具体策を作ったり、提供して、使ってもらってハッピーになるものづくりとことづくりの担当です。


そして、周りのサポーター陣は、お互いの専門性を理解しつつ、ここはこの担当だなと当たりをつけて提案することができたら、とても役に立てます。その役割がセットされて運用できれば、スピークはがんだけではなく、マイノリティ(少数派)の人たちのためのプラットフォームになれるのではないか、と考えています。


すべての人に多様な選択肢を

私たちが生活する社会には、いろんな人のいろんな暮らし方があります。回答は一つではないし、ある人にとっていいことが他の人にもフィットするとは限りません。


すべての人が、必要な時に必要なサポートを選んで使って、社会生活を続けながら治療と人生を進めていくためには、多様な選択肢が必要です。多様な選択肢が発生する条件は、多様なプレイヤー(挑戦して作り出して提供する人たち)の参加です。感じて、考えて、これができると思った人がチャレンジできる、それが患者さんたちに提供されていく、そんなコミュニティにスピークななりたいと考えています。




スピークを作ってくれた人たち

スピークは、北九州市のアクセラレーションプログラムGAP-Kの支援を使って立ち上げました。久留島さん、橘さん、小野さん、デザインを作ってくれたカピバラデザインさん、鬼コーチの前田さん、小田さん、本当にありがとうございました。


←この可愛いロゴを作ってくれたのも、カピバラデザインさん。


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難しいことも、ちょっとしたことも、安心して言葉にできるコミュニティです。


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